クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち (PHP新書)

クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち (PHP新書) [ 松崎 一葉 ]

 

★★★★★

本の概要

クラッシャー上司とは、「部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人」だという。
クラッシャー上司の諸問題は日本に特徴的なものであるとし、クラッシャーの存在規模に関するきちんとした統計はないものの、著者の経験知上、「一部上場企業の役員のうち数人は『クラッシャー上司』」だという。 この本には、クラッシャー上司のタイプ別の事例から、彼らの精神分析、そして対クラッシャーの具体策までもが書かれている。
また、「上司」ではない人物の「未熟型うつ」(「新型うつ病」)に関する事例も取り上げている。 この本のターゲット読者としては、クラッシャーに悩まされている会社員はもちろん、管理職や経営者も含まれるとのこと。 また、書かれている具体策は、クラッシャー被害者だけではなく、そうでなくとも「最近、しんどいな」と感じている人にも参考になるとのこと。
しかしながら、クラッシャーの要素は、多かれ少なかれ誰の中にもあるという。これを発現させないための知恵も、この本には含まれている。
著者は精神科産業医であり、この道の研究を始めてから15年間の知見がこの本には盛り込まれているとのこと。

感想など

良書は力なり。という言葉がぴったりの本かも。

私がこの本を手にとった理由は、クラッシャー上司によって無用なストレスを受けるのを未然に防ぎたいという思いからだ。
クラッシャーと言っても複数の典型パターンがあるとのことで、それぞれ紹介されている。
よって、クラッシャーに悩まされたことがある読み手の実体験は、どれかの事例パターンにだいたい合っているか、近いか、もしくは組み合わせたような感じになると思う。

ただし、怒鳴り散らしたり体罰を加えるというような、もはや簡単に即訴えられそうな古いタイプのクラッシャーについては書かれていない。もはや絶滅種なんだろうか。いや、日々怒鳴り散らしタイプは、数年前に同じ職場にいたんだっけな。まだ希少に残っている模様。
まあその代わり、決定的なパワハラ言動を残さないようなネチネチやジワジワタイプの、現代的なクラッシャーがこの本には網羅されている感じ。

著者は精神科産業医であり、JAXAで長期閉鎖空間でのサポートについても研究しているということで、その点からもとても信頼できると思う。 この本の良いと思ったところを箇条書きにしてみる:

・読むだけで「そうこれこれ!」と共感できたりする。
・クラッシャーに悩まされたことがある人は、自分だけじゃない、と少し安心できる。
・クラッシャーの精神構造を知ることで、クラッシャーに対する未知への恐怖感が多少薄れる。
・誰でも実行できそうな具体的な対クラッシャー策が書かれている。
・事例は単に物語としても楽しめる。  ただし、読んでいるとクラッシャーに対する怒りや呆れ感が湧き上がる可能性が高い。さらに、被害者に対する共感と同情を感じることで、人によっては自分自身の体験がフラッシュバックしたりしてより大きな怒りや辛さに出くわすかも。
・クラッシャーに出くわしたことがない場合でも、この本を予め読んでおくことで、クラッシャーに出くわしてしまった際に被害を最小限に防ぐことができるかも。
・身の周りのクラッシャー被害者を助けることができるかもしれない。
・クラッシャーを減らすことは被害を受けている自分のためだけではなく組織や社会のためにもなる、ということが分かる。
・自分自身がクラッシャーになってしまう可能性を減らせる。
・このような研究をしている著者のような方がいるということ自体から勇気づけられる。

というわけで、とても充実した内容だった。
現在関わっているクラッシャーと照らし合わせながら読むのは勿論よいし、だがそれよりも過去に出くわして今は関わっていないクラッシャーがいたならそいつを思い浮かべながら読むと、そいつに対してより冷静な判断を下すことができるかも。つまり、そのときに自分が受けていたストレスがどれだけ無意味で無駄なものだったかをより深く再認識できるかも。

あと、本の帯に描かれている漫画/アニメ風のクラッシャー上司がかなりいい感じ。
人間的に小物タイプだけど頭はキレてけっこうやっかいな敵、という感じが出ててかなり気に入った。漫画とかで主人公がこういう敵を詰ませたときのカタルシスってかなりいいもんだ(・∀・)

内容は全く関係ないけど、本のタイトルから真っ先に連想したのはこれ。ちなみにジョウはいい奴。

連帯惑星ピザンの危機 クラッシャージョウ 1 ハヤカワ文庫JA / 高千穂遙 【文庫】

 

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