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★★★★
デジタル社会、というかPC/ネットワークベースな社会における、色々な不満点や非効率的な点や不幸な点を、片っ端から羅列して、それぞれ詳細と所感を述べている感じ。
読んだきっかけとしては、私がデジタルというか今日のPC/ネットワークベースな社会に対して、不満とイラだちと、それらによる社会の持続可能性に対する憂いを、ここ何年も感じていたので、それを共感してくれるこの本のタイトルを偶然にも発見し、即座に読むに至った。
この本の著者は、コンピュータやネットワークの研究者である。
いわゆるPC難民の人がこの本に書かれているようなことを言ったら、単なる愚痴に終わるかもしれない。しかしこの本は当然ながら、コンピュータの研究者という実績を持つ人が書いているからこそ、説得力がある。それに内容は勿論、技術的/知識的に、専門的な部分を含んでいる。
ちなみに私自身も、子供時代からけっこうどっぷりPCやネットワークに慣れ親しんできたデジタルネイティブを自負しているので、多少は愚痴る資格はあると思っている。
この本に羅列されている多くの問題点は、コンピュータを使う多くの人々が既に感じていたり、既に考えたりしていることなのかもしれない。
しかしそれらの問題点が分析され、解決策が模索されているという点で、この本を読む価値がある。
書かれていた中で、最も根本的で、興味深い問題。それは、デジタル機器を作り出す「送り手」にある問題。これは、全般を通して書かれている。
ただし、実際の解決策としては、ほとんどは結局「受け手」が防衛策を張るというところまでしか書かれていない。
あと、問題の具体例として、実際にあったITにまつわる事件が、匿名で書かれている。それも違った意味で結構面白い。
あ!あのウイルス検知ソフトの誤検知暴走事件だw とか、わかると結構面白い。
読みながら、ほぼ全て項目に対して共感しながら読むことができた。
勿論、今のデジタル社会に何の不満もない人や無関心な人が読んだなら、正反対の感情を抱いたり、単に保守的と罵るだけで終わるかもしれないが。
IT化が進み、ITを称賛したり促進するための書物は、既に死ぬほど世に出ている。
新製品や多機能化やバージョンアップをネタに、無限と思えるよな増殖。
しかし、それらの問題点を指摘しているこの本みたいなのは少ない。だからこそ興味深い。
内容に対してさらに欲を言うなら、人間や社会がどれほどまでの複雑さに適用できるのかとか、社会におけるデジタル製品の今後の開発に対するコントロールの必要性とか、その辺りにまで踏み込んでくれたら、もっと面白かったかもしれない。
とはいえ、それはもう脳科学や人類学や、社会学や経済学の分野なのかもしれないが。そうなると、技術的なバックグラウンドを持つ人だけではなく、他の分野からの知見が必要になるんでしょう。
ピンポイントで笑えたのは、各章の扉ページに書かれている、皮肉めいた一言。どれも際どく核心をついているような一言で面白い。
ペラペラとめくりながらこれらを読むだけでも、この本を手に取る価値はあるかもw